千佳子は、実験用装置に座らされていた。
千佳子の脚のつけ根と、ひざの少し上は強固に固定され、足をわずかとも動かせないようになっていた。
これから、痛覚によるエネルギー発生実験が始まる。
研究員から、実験開始の声がかかり、彼らが何か機械を操作しはじめた。

千佳子の腿の裏側にちくりとした痛みが走る。千佳子は一瞬びくりと身体を震わせたがあらがうすべはない。
針は、「ブツリ」と千佳子の腿に刺さり、ゆっくりと腿の中を進みはじめた。

絶叫が研究室内に響いた。

しかし針は止まらない。一定の速度で千佳子の腿の中を進んでいく。
まもなく腿の一点が少し盛り上がった。と思うと「プツリ」と小さな音がして、光る金属の先端が見え、赤い液体が
小さな玉をつくり、ながれ落ちた。
体細胞への破壊がおさまり千佳子の声がやんだ。荒い息をつく。涙が止まらず胸にぼたぼた落ちた。

針はそのまま10センチほど突き出されてとまった。
その針の停止とともに。腿の裏側の、別の部分に小さな痛みが走った。

泣き叫ぶ千佳子の声は、しかし10分ほどで小さくなってきた。
千佳子の特性により、速やかにβーエンドルフィンが分泌され、痛みを緩和したのだ。
腿にはすでに10本をこえる針が突き出していたが、腿への痛みはすでに馴致され、千佳子には大きな効果を
およぼさなくなってきた。

性エネルギー発生機関が稼働し、エネルギーを産み出しはじめる。

千佳子への実験はフェーズ2に移行する。
背中の一点に小さな圧迫があたえられた。先端の丸められた鋼鉄の針金だ。
それは、油圧シリンダーで強い圧力をくわえられ、むりやりに千佳子の背中の皮膚を突き破った。
鋼線が千佳子の腹部を進入してゆく。内臓を傷付けないように、丸められた針は機械によって動かされ
内臓を掻き分けて腹のほうへと進んでゆく。
内臓をかき混ぜられて、千佳子の呼吸がけいれんするように浅く早いものにかわる。

千佳子は全身をぎゅっと緊張させた。

やがて、千佳子の腹の一部が盛り上がった。
先端が尖っていないため、皮膚を速やかに突き破ることができない。しばらく千佳子の腹膜を押し続けた後
堪えられなくなった皮膚に穴があき、鋼線がブツリといきおいよく5センチほど飛び出した。

脳内麻薬で緩和しきれないほどの痛みに耐えきれず、千佳子の目は焦点を失った。
失禁していた。

研究員が失笑するのを遠くに聞きながら、千佳子は意識を失った。


千佳子は、ジェネレーターガールになった時に、Lv.1の改造を受けた。
千佳子への改造は、細胞賦活力の強化だった。筋肉に付けられた程度の傷はすぐに治癒される。
2日後、あれだけ刺された腿の傷や腹部の穴はすべてふさがっていた。

今日は、別の種類の実験がおこなわれる。

「今日は、まず、腿の肉をメスで切り取っていきましょう。」
研究員が言った。