私は決心しました。 永遠なんていらない。今このとき、私のすべてを輝かせてしまおうと。

今日はまた実験があります。私は賦活装置に仕掛けをしました。目覚し時計とニクロム線とガソリンと。
簡単なものだけれど、うまくいくはずです。

そして私は主任の前に身体をさらしました。
いつもは、主任のされるがままにされている私ですが、今日は特別な日ですから、思い切っておねだりをしてしまいます。
「渕田さん、おねがいです。今日は私をばらばらにしてください。腕も脚も身体もあそこも切り裂いてください。内臓を引きずり
出してください。私をお肉屋さんに売っているような細切れになるまで切り刻んでください・・・」

うわ、渕田さんなんて言っちゃった。主任、気を悪くしないといいけど。
心配をよそに、主任は少し目を細め薄く笑った。 私がすでに欲情しているのがわかったんだ。

主任のメスが私のおなかに縦に入る。
さばかれた魚のように、私のおなかからは内臓がどろどろと流れ出した。

うあああ。私の身体が壊されていく。私は、殺される。命を失う。意識が途絶えたら、私というものはいなくなってしまう。
そういった感情が、私の脊髄を走り股間に集中する。

もっと、壊して、私を。 私を、惨めで無様な肉塊に変えて。

そう、今日は特別な日。私が本当にただの肉の塊になってしまう日。
私が主任にすべてをささげる日。
普段の日の何倍もの快感が私の全身を貫く。

あそこがどろどろにぬれる。


私は何度も、主任に愛の言葉を叫んだ。普段は決して言わないことだけれど。
今日は。今日だけは。

私の身体は、少しづつ小さくなっていった。
半分以上は切り取られてしまった。もう、どこで快楽を感じているのかもわからない。
ただすべてが、もう痛みとか快楽とかからはなれて幸福だけを感じていた。

そしてそのとき。
非常ベルの音がけたたましく鳴り出した。終わりのときが来たんだ。私は、長くため息をついた。ため息をついたつもり
だけだったかな。肺なんてちゃんと残ってなかったから。
主任は驚いてどこかに電話をかけている。 少し話していたが、ふと私のほうを振り向いた。
その瞳が見開かれる。

今気がついたのだ。 私を殺してしまったことに。
意識が朦朧としてきた。
でもいいんだ、私の人生で最高にすばらしいときはもう終わり、あとは眠るだけ。
最後に見るものは主任の顔かな。

ねえ、主任、だいじょうぶだよ。今度のことは全部私がやったことだって、手紙に書いてある。遺書もあるよ。
主任には責任がないって、ちゃんと書いてあるから。安心して。

ねえ、そんなにうろたえたような顔していないでよ。
最後に笑顔見せて。

ほら、私は笑っているよ。

もう、主任の顔、よく見えないや。私、ちゃんと笑えてるかなあ。